NICE AGE YMOとその時代―1978‐1984 田山 三樹

申し訳ないけれど、読む前はほとんど期待していなかった。YMOの年表だったりディスコグラフィだったりがまとめられた書籍があることは、新たにYMOに興味を持った人には有用だろうとは思っていたけれど、過去に類似の資料を購入した人にとっては、新たに追加された情報との差分を拾ったり、誤りを探して悦に入ったりする程度の意義しか得られないのではないかと。

立ち読みしてみて購入に至ったのは、年表より後ろにあったインタビューが面白そうだったから。ここ何年かの間に、解散(散開、どっちでもいい)そして再結成(再生、これまたどっちでもいい)の後のメンバーに対する良質のインタビューがなされていたから、これ以上YMOについて聞くことはしばらくないだろうと思っていたものの、例えば渡辺香津美に単刀直入にYMOについて尋ねたものを読むことはこれまでになかったと思う(渡辺香津美の経歴のインタビューの中でYMOにちょっとだけ触れたものは読んだことがあったけど)。

で、実際に読んでみて(というか、年表の部分は飛ばしたので未読)、本当に面白かった。聞き手の「YMOの周囲にあった何かを関係者へのインタビューを通じて浮かび上がらせる」という意図は大成功していると思う。驚くこともたくさんあったし、距離は全然違うけれど、YMOのリスナーとしてYMOと同じ世の中に生きていた一人として共感することもあった。また、YMOの時代から20年以上を生きた人間として共感できることもあったような気がする。

インタビュー部分をYMOをあまり知らない人にお勧めできるのかどうかは疑問が残る。とはいえ、YMOを知らない人も、YMOをそれなりに知っている人も満足できるコンテンツをどちらもバランスよく含む本、というのがこのような本に求められるありようなのではないかと思う。YMOを知らない人たちがインタビュー部分に啓発されて、どこか面白い方向へ進むのも面白いだろうし、逆にYMOをそれなりに知っているだろう読者が年表から何かを再発見したりするのも素敵な体験だろうと思う。

これがYMOに関する最良の書籍であるかどうかはわからない。おそらく答えはNoだろうと思う。しかし、難なく入手可能である商品であること、というのは何にも替えられない価値であろうと思う。YMOの音源を買おうと思っているならば、そちらを優先すべきだろうと思うが、既に音源を持っていて、YMOについて何かを知りたいと思っている人ならば、まずは手にとってみてはどうかと思う。