エスカレーターの作法

エスカレーターに乗るときにはステップの半分を開けるようにして、急いでいる人がそこを通れるようにしておく、という作法を知ったのは30年近く前のことだ。たしか、Popeyeに載ってたんだと思う。この作法はあっという間に普及して、駅のエスカレーターなどではステップの半分が開いていないことの方が少ないと感じる。

この作法は合理的だとは思う。でも、時折それはどうかなぁ、と思う場面にもでくわす。

最たるものは、ステップの半分が開いている状態で、エスカレータ待ちの人が長い行列を作っているときだ。エスカレーターを歩くほどの元気はないが、列を作って待ちたくないときに、仕方なくエスカレーターをエッチラオッチラ歩くことになる。長いエスカレーターだとかなりしんどいけれど、一度「歩く側」に入ってしまったら最後まで歩き続けないと後ろから来る人に怒られそうなのでがんばるしかない。ふー。

逆に急いでいるときに「歩く側」をのんびり歩かれるのも困る。「歩かない側」が満員の場合は仕方ないけれど、そうじゃないときはできれば「歩かない側」に一旦退避して欲しいと感じてしまう。「歩けばいいんでしょ」ではなく「より急いでいる人がいたら通り道を開けてあげる」にしてもらえると助かるな、と。

僕としては、エスカレーターにどう乗るかは、人それぞれ異なってよいと思う。仲良しの人や子供と横並びになりたければそうすればいいし、歩きたい人は他人に迷惑をかけない範囲で歩けばよい。人がどうしようが、その行動によって具体的な危険が生じていないならば、それに干渉すべきではない。エスカレーターに乗るときは通路を空けて当然、とは僕は思わない。急いでいるときに前がふさがっていて、なおかつ塞いでいる人が退避する空間があるならば、「通してください」とお願いすることはあると思うけど。

エスカレーターに歩いて登る空間を残すために、乗り口で長い列を作っている人たちはどう考えているんだろう。僕は後ろから来た人に「通れねぇよ」と怒られるのがイヤだからそうしているんだけれど、実は多くの人が「私は待ってもいいから急いでいる人に早く登らせてあげたい」と考えていたりするのかな。